日本語教育についての備忘録-発音編①-
日本語教育についての備忘録-発音編①-
目次 |
日本人と英語話者での発音の考え方の違い
・日本人
一般に仮名1文字が発音の単位と考える。
→母音とか子音とかいう単音(音声学的最小単位《音声記号の単位》)の意識がない。
ほとんどの音を子音と母音との組合せによる両者未分の音節の単位で捉える。
・英語話者
英語が音素文字を音の単位とする言語の為、英語と同じように日本語の音も単音の単位で捉える。
日本人のように仮名1文字をひとつの音の単位としては決して捉えない。
※音素文字:ひとつの文字で1音素を表すもの。音素とは発音の最小単位。
例:「学校」
「gakkoo」の/g/・/a/・/k/・/k/…
それぞれの母音・子音(上記の赤字)を音素という。
”がっこう”の”が”は/ga/(母音+子音)に対応しており、これ(ひらがな・カタカナ)は音素文字ではない。
英語話者の日本語の音の捉え方
日本語の子音と母音の連続音として知覚する(音素の連続)。
[例外:母音(ア行)、撥音(ん)、促音(っ)]
日本語の「逆さ言葉」という言葉遊びを例にする。
これは仮名文字を音の単位としたもので、音節の単位で認識している証明でもある。
例:
日本語では「トマト/tomato/」の逆さ言葉は上から読んでも下から読んでも同じ「トマト」になる(音節単位で認識しているため)。
しかし、英語話者にとっては「/o/・/t/・/a/・/m/・/o/・/t/」になる。
「浮く/uku/ 」の場合は、日本語では下から読んだら「くう」となり逆さ言葉にならない。
しかし、英語話者にとってはこれが「/u/・/k/・/u/ 」となり、上から読んでも下から読んでも同じ逆さ言葉になる。
※世代がバレるが「山本山」という海苔メーカーのものは、漢字を使った視覚的な回文(言葉遊びの一種)。
日本語の母音の[i]と[u]が弱く発音される場合
「i」「u」が
・無声子音(k,s,sh t, ts ch h, f,p)にはさまれるとき
・語尾(無声子音に後続する時)の場合
「i」「u」は非常に弱く発音される。
例:
hisho(ひしょ), Tsuki(つき), suki(すき), kiku(きく), kusa(くさ), shita(した)
desu(です), masu(ます)
※無声子音:声帯振動を伴わない子音。無声音。 →日本語では、カ行音・サ行音・タ行音・ハ行音・パ行音の子音(k,s,sh t, ts ch h, f,p)が無声子音。声帯が振動していない為、喉仏に手を当てて発音しても震えは感じない(この時決して母音を伴わないず発音すること)。 |
母音の無声化(または弱音化)についての注意点
・母音が無声化してもその音節は1拍分をとる。
・日本人でも個人差があり、地域(関西方言など)によっては無声化が起こらない所もある。
・話す速度によっても起こったり起こらなかったりすることがある。
・無声子音に後続する母音/i/./u/ が語尾にあっても、その拍(語尾)にアクセントがあれば無声化は起こらない。
例:
アクセントなし「各/kaku 」は/kak/ になる。
アクセントあり「角/kaku」は/kaku/ で無声化は起こらない。
※無声化が起こる環境にある母音でも、その母音がアクセント核(下がる直前の拍または音節)を持つ場合は無声化が起こりにくくなる。 「吹く/fuku/ふく」(高)・(低) 「ふ」は無声化が起こる環境にある母音(無声子音にはさまれる)だが、アクセント核が来るので無声化が起こらない。 「服/fuku/ふく」(低)・(高) 「ふ」は無声化が起こる環境にある母音(無声子音にはさまれる)で、且つアクセント核がないので無声化が起こる。 |
拍について
拍とは仮名1文字を音声の基本の単位とした時間的まとまりのこと。
[例外 拗音(きゃ、きゅ、きょなどの音)は2文字で1拍]
この持続時間はどれも等しい。
※厳密には長母音の第2音は実際にはやや短い。しかし、それでも1拍分取る。
日本語は短母音と長音との違いで意味の異なる語が多く、拍は重要。
英語は母音にいくつかの子音が連なる閉音節の言語であるため、日本語の長音や撥音などを1拍として意識できにくい。
例:
「雪/yuki/」と「勇気/yuuki/」
どちらも英語話者には2音節(2拍)となり、「勇気」を3拍と捉えられない。
「ユキ」(2拍)、「ユウキ」(3拍)
母音について
拍に関係するが英語には[ai]や[au]などの二重母音が9つほどあり、特徴として第1音(主音)が強くはっきり発音され、第2音(副音)は弱く短く発音される。
そして2つの母音は1音節としてつまり一度に1拍で発音される。
例:
「会いたい/aitai/」を4音節(4拍/a/・/i/・/ta/・/i/)とせず2音節(/ai/・/tai/)として「アィタィ」と発音してしまう。
日本語では母音が重なってもそれぞれ1拍として発音しなければならない。
また、短母音を二重母音のように発音する逆のケースもある。
例:
「おもしろい/omoshiroi/」を/oumoushiroui/ のように発音しがち。
日本語はすべて単母音なので、短くはぎれよく発音しせなければならない。
参考:東京外国語大学言語モジュール”https://bit.ly/3Cw7bXJ” THE WORLD JAPANESE LANGUAGE CENTRE『一般通信講座』 |